雨恋~雨のちキミ~
「えっ………と…。うん、さっきの実習でクッキー作ってたみたい」


「ふーん。で?」


ほうきの先端に両手を乗せ、そこに顎をつけてジッとあたしを見下ろす

『で?』は、誰から貰ったのかという言葉に対する催促だろう


「な…何で塩野くんがそんなこと気にするん?」


ニコリともしないその表情に気圧され、少し怯(ひる)みながら答えた


「いや………。さっき、階段のトコで水月先輩とすれ違ったから」


「塩野くん…水月先輩知ってるん?」


なぜ塩野くんが先輩を知っているのか分からず、首を傾げながら聞くと


「俺、バスケ部やけど」


更に不機嫌そうな声が返ってくる


「えっ、そうやったん?全然知らんかった!」


塩野くんもバスケ部に居ったんや


運動部の1年生は、大抵どこもコート脇でボール拾いや声援を送っていることが多い

上級生の練習に本格的に混ざれるのは、実力のある1年生か、ある程度の期間を経てから

それにいつも水月先輩ばかり見ていたからか、まったく気付かなかった


「恵は、試合の時とかいっつも里中と一緒に見に来てるやんな」


「え、何で知ってるん…?」


いつもたくさんの女の子達が応援に来てるから

誰が居るかなんて、コートからは分からないと思ってたのに
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