雨恋~雨のちキミ~
手すりに手を添わせ、一段飛ばしで階段を駆け下りていく

のんびりと下りていく人達が、不思議そうな顔であたしの方へと振り返るけれど

そんなこといちいち気にしていられない

息を弾ませエントランスまで駆け込むと、自分の靴箱の場所に右手を置き

そこにおでこを乗せた

全力疾走したからか喉がカラカラに渇き、ゴクンと大きく息を飲む

何度か大きく肩で息をして呼吸を整え、スチール製の扉を開け靴を履き替えた


先輩………もう待ってるかな


エントランスといっても、1年から3年までの靴箱が勢揃いし

学年ごとに分けられているため、他学年の人とは靴箱の位置が全然違う

その中に入ってキョロキョロする勇気もなく、出入り口ドアに一番近い靴箱の切れ目から身を乗り出すと

靴箱に背を預けて外を眺める水月先輩を発見


「おっ、お待たせ…しまし、た…」


本当に待っていてくれたという嬉しさと

待たせてしまったという申し訳なさ

そして、あの憧れの先輩と一緒に帰宅出来るという緊張感に

思わず声が上擦る


「あー、お疲れー」


あたしの声に振り向いてくれた先輩の笑顔が眩しくて


先輩の周りがキラキラしてる…


「お………お疲れ様です…」


アカン、眩暈する

こんなに幸せでいいんやろか
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