雨恋~雨のちキミ~
さっきまで邪魔で仕方なかった鷹野先輩だけれども

こんなにコロコロ表情が変わる水月先輩が間近で拝めるのなら───


もう少し居てくれてもいい…かな


頭の中で、お座りをする鷹野先輩に両手をこすり合わせ拝み倒すあたし


アカン

妄想が止まらん


つい頬が緩んでしまう


「───賀。千賀?」


さっきまで鷹野先輩と喋っていたと思っていた水月先輩が、至近距離であたしの顔を覗き込んでいる


「はっ、ひぇっ!」


ボーッとしていたあたしは、その近さにものすごい奇声を上げてしまった


「ぶっ!ふ………は、ははははははは、あはははははは。何、その声………。ひひひひひひ」


ツボに入ったらしく、盛大に笑う鷹野先輩と呆気に取られた表情の水月先輩


………穴があったら入りたい…


醜態を晒したことが恥ずかしくて、勢いよく俯く

すると頭のてっぺんに、ポンポンと温かい感触


え───


何かと思って顔を上げると、にっこりと微笑んだ先輩と目が合った


「帰ろっか」


「………はい」


特別可愛くもなくて

勉強が抜きん出て出来るわけでもない

運動はどちらかというと苦手な方

それなのに───


何であたしが水月先輩の彼女なんやろ


先輩の笑顔に癒されながらも

不安に思う気持ちが心の中に波紋を投じた
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