雨恋~雨のちキミ~
※※※



「───でな、その時のセンセーの顔っ…ぶ、くくくくく」


何が楽しいのか、さっきからずっと1人で喋る鷹野先輩


何でこんなことになってんの…?


水月先輩と一緒に帰るはずだったのに

あたし達の間に立って、右に左に顔を向けながら一生懸命喋るお邪魔虫男


「なーなー、聞いてる?」


「はいはい」


鷹野先輩が喋りっぱなしだから、水月先輩も相槌を打つ程度

もちろん、あたしと水月先輩の間に会話はない

前方を見ると、もうすぐそこに我が家


水月先輩との初めての下校タイムが…

二人っきりになる時間、一秒もなかった………


隣の人をキッと睨みつけてみても、水月先輩の方を向いているため

あたしの視線に気付かないらしい


鷹野先輩のアホ!


後頭部に念を送る

すると───

鷹野先輩は振り返らず、彼の向こう側から水月先輩がひょいと顔を覗かせた

予想と違った結果に、思わず目を見開いて固まってしまう

だけど先輩はあたしを見て微笑んだ後、そっと首を傾げた

それだけで鷹野先輩のことなんてどうでもよくなるんだから、相当重症だ


「あ、あのっ…」


あたしの言葉に、鷹野先輩が振り返る


「どしたん、千賀ちゃん」


「あたしっ…家がここなんで…」


家の前で立ち止まると、先輩達もそれに倣って立ち止まった
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