君に捧げる花束を
顔を背けたまま、函南君は動かない。
しばらくして、手で目もとを拭うと、ようやく清花の方に向き直った。
微かに目もとは赤いけれど、いつものポーカーフェイスの仮面を被っている。
「俺から…家柄と弓道とったらなんも残んねー…。
無愛想だし、
短気だし、
いいとこなんもねーのな。ホント、あんた俺のどこが好きなんだよ。」
そう言って、彼は乾いた声で自虐的に笑った。
でもどこか、すっきりした顔。またひとつ、初めて見る函南君の顔。
清花も、ちょっとだけ笑って、函南君の顔を目線だけで見上げた。
「家柄とか、弓道とか。
それは函南君の人柄と関係ないじゃない。
函南君のいい所はたくさんあるよ。
知らないなら、これからどんどん知っていけばいいの。
函南君が知らない函南君のいい所を、全部、教えてあげる。」
函南君は目を真ん丸に見開いた。
黒い瞳に、清花を映す。
やがてその表情が、ふっと緩められた。
「………生意気。」
挑戦的なその瞳は、いつも清花を惑わせている光が蘇っていた。