君とカフェで会えたら

Wデート。

「先輩・・・」
「ん?」
(どうして?どうしてそんなに優しいの?・・どうしてただの後輩の私に優しくするの?どうして彼女が居るのに私を誘ったの?)

そう思うのに・・聞きたいのにやっぱり聞けなかった。

湊先輩は何も言わず私の手を引いてそのまま並木道のベンチに座った、つられて私も座る。

今はダメ・・・先輩の優しさが痛くて、苦しくて・・もう涙を止める事が出来ない。

「ごめんなさい・・何でもないんです」

「何もないなら泣くわけないでしょ?」

「本当に大丈夫です、ごめんなさい・・ちょっと疲れが溜まっていっぱいいっぱいになっちゃっただけで・・」

「俺じゃ頼れない?」
先輩が泣きそうな顔でそんな事を言うから私は必死に言った

「ちっ違います!先輩はいつでも優しいし頼りになるし・・」

「なら頼ってよ・・可鈴ちゃんに頼ってもらえたら俺嬉しいんだけど」

「そ・・そんな」 (何で今そんな嬉しい事を言うの?)

私は喉まで出かかっていた疑問を飲み込むと立ち上がった。
「本当に大丈夫ですよ!先輩に心配かける訳にはいかないので!じゃあお疲れ様でした!」

(ここで、先輩に余計な心配をかけたくない・・・。)

それだけ言うと全速力で駅へ走った。

その日は家(団地)の前の公園のベンチで思いっきり泣いた。
公園なら暗くて顔が見えないし、私が家で泣き出したりしたら芽衣や理桜が不安になるから家では泣けない。泣きたい時はこの公園でと決めている程だった。
(どうして私ばっかりこんなに苦しい想いをしなくてはいけないの?・・どうして先輩には彼女が居るの?)
先輩の特別な存在である彼女が羨ましくて妬ましくて涙が止まらなかった。
その涙がようやく落ち着いたのは夜の10時過ぎだった。

団地の階段を上がって2階の我が家に入る・・当たり前だけど陽も芽衣も理桜も布団に入って眠っている。
ふとダイニングテーブルの上に目がいった。
そこには私の好きなミックスフルーツジュースのパック1つと陽の少し荒っぽい字で書かれたメモが一緒に置いてあった。

『姉ちゃんへ』
ただそれだけだったけど、そのメモとジュースを陽がわざわざ準備して置いてくれた事が嬉しくて、嬉しくてまた涙がこみ上げてきた。
(陽は私が頑張って来たことちゃんと見てくれていたんだね・・陽は私よりもずっと大人かも知れない・・)
和室のふすまを少しだけ開けて寝てる陽を見て小さな声でつぶやいた。
「ありがとう陽・・」
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