君とカフェで会えたら
家に帰るともうとっくに布団に入って
いるはずの兄弟がリビングで折り紙で
遊んでいた。
12才になった弟は陽(ヨウ)、
4才になった双子の妹、芽衣
双子の弟の理桜(リオ)という名前だ。
お母さんは私と同じ新緑の季節が好き
で4人とも花か新緑の季節っぽい
名前がついている、ちなみに私は11月生まれ
なので花梨からとって可鈴
可鈴って名前は本当は花梨と言う字にする
予定だったけど、お父さんが可鈴の
方が可愛いってお母さんに提案したらしい
お母さんの名前は千春と言う。
お父さんとお母さんは2年前に離婚し今は
女手一つでお母さんが生活を支えている。
リビングに入ると私は疲れた顔で長男の陽に尋ねた。
「まだ起きてたの?小学生の内は9時になったら寝る決まりでしょ?守んなきゃダメじゃない。」
すると不機嫌そうな顔で陽が答えた
「だって芽衣と理桜が言う事聞かない
んだもん、姉ちゃんが帰ってくるまで
待ってるって言って」
そんな事を言われると2人の事が可愛くて仕方がない、今すぐギューって
したいって思った。
私は芽衣と理桜のそばに来て頭を撫でて2人を順番に抱きしめた。
「はぁーそっかぁ待っててくれたんだぁありがとう、でももう寝なきゃダメだよ?明日も幼稚園なんだから」
そう優しく言って私は2人を寝室に
連れて行き、布団に寝かせた。
「じゃあ絵本読んであげる!何が良い?」
静かな声で絵本を読んでいたら自然に
まぶたが重くなってくる・・・
あぁ~眠い・・その日は私も2人と
一緒に眠ってしまっていた。
=朝5時=
目が覚めると私は制服のまま眠って
しまった事に気づいてガックリと肩を
落とした。
「またやっちゃった・・・」
夜遅く帰って来て制服のまま朝まで
寝てしまい制服にシワが付いてしまう
事はこれが初めてでは無かった。
でも落ち込んでいる暇は無いので、
まだ眠たいまぶたを頬を叩いて起こ
す。私はリビングに行くと
ホワイトボードを見た。
これが安里家の朝の日課だ。
まず起きると、
お母さんのメモが書かれた
ホワイトボードを見る。
お母さんが仕事の時はお母さんの顔を
ほとんど見る事が無いので、私達が
不安にならないように、毎日一言、
メモを書いてくれる。
お母さんは凄い・・・毎日朝から晩まで働いているのに帰ってきてまずやることが子供の事で、自分の事はいつでも後回し・・私がいつかお母さんになったら
子供の為にそこまで出来る
だろうか?そう考えるけどやっぱり
無理な気がした。
私はお母さんのメモに目を通すとすぐにお風呂場に行った。
今日はいつも以上に急がないとアイロンをかける時間が無くなる。
2時間以内に歯磨きと洗顔、朝シャンと髪のセット、朝食&お弁当作り、自分と兄弟の学校の準備、制服のアイロンがけのをすべて終わらせないといけない。
ある意味朝は戦場だ、やることが多すぎて家を出る頃にはすでにクタクタに
なっている事が多い。
朝から怒りたくないのに陽がのんびりしてるからついつい口出してしまう。
だって時間が無いんだもん、
なのに陽がのんびりしてるから、
だから陽にはキツくあたってしまう・・・本当は怒りたくないのに・・・。
『長男なんだからしっかりしてよ!』
私は陽にこの言葉を毎日のように言ってる気がする・・・きっと陽からしたら嫌なお姉ちゃんなんだろうな・・・。
朝7時、可鈴は弟達の準備を終わらせ
るとリビングのテーブルに置いたお弁当箱を急いでスクールバッグに入れて
全員で家を出る。
残念ながら制服のアイロンがけをする
時間が無かったのでスカートのシワが
付いた部分を両手で叩いた。
今日も1日が始まる・・・
今日も学校の後はカフェでバイト、
今のアルバイトが少しでも家計の助けになってお母さんを楽に出来れば嬉しい。
私がアルバイトをする理由は
ただ一つ、お母さんを楽にしてあげたい・・・。
ただそれだけだったんだ・・・
・・先輩と知り合うまでは。