君とカフェで会えたら
=バイトの後=
麻友は私に『告白するなら最後に可鈴がプレゼントしようと思ったイヤホン渡した方がスッキリすると思うよ』と言った。

確かにそうかもしれない。
私は新しくキレイに包んだプレゼントを鞄から出して裏口近くで先輩を待っていた。
少しすると、先輩が出て来た。
「可鈴ちゃんお疲れ様!」
何故なんだろう…どうして先輩はいつも爽やかなんだろうジメジメした空気を吹き飛ばすような爽やかな笑顔にまた好きになってしまいそうで怖かった。
「湊先輩、お疲れ様です。あの…先輩」
「ん?」
「ちょっとお話ししたいんですけど少しだけ付き合ってもらえませんか?」
「うん大丈夫だよ?話って何かな」
「ここだとまずいので公園で話してもいいですか?」
「分かったじゃ行こうか」

=夜:カフェ近くの公園=
最初に切り出したのは先輩だった。
「で…話したい事って」
「ずっと先輩に伝えたかった事があるんです…でも今まで踏ん切りが付かなくて言えませんでした」
先輩は私と相向いに立って真っ直ぐ私を見ていた。
「うん…」
「でもこのままじゃ私、ただの後輩、ただのバイト仲間ではいられないと思ったし先輩の大事な彼女さんにも失礼だと思ったからちゃんと自分と向き合う事にしました…」
先輩は何も言わず聞いてくれた。

「私…安里可鈴は、湊健吾さんの事が好きです!大好きです。」
「えっ…」
「先輩は私に想われても期待に応えられないし迷惑だと分かってます…でもこれだけは伝えたかったんです。入学式の日に先輩を見てから今日までずっとこの想いが変わった事なんてありません…先輩に彼女が居るって前から分かってました…だけどこの想いは消えてくれなかった。好きです先輩、私の事振って下さい!振ってもらえないと諦められないんです!お願いします」
「…いや、そんな事言えな…」
「…お願いします」
「分かった…俺も、もしかしたらそうかもしれないって思ってたんだけど…でもまさか、可鈴ちゃんが俺の事好きだなんて信じたくなくて…ごめん」
「……。」

私は返事の代わりに首を横にふった。
先輩は深呼吸をすると言った。
「ごめんなさい。付き合ってる人が居るんだ。」
「……。」
(どうしてだろう…先輩のこの言葉を言われるのを頭の中で何度も思い浮かべて、実際に言われても平気なように練習してたのに…どうして涙が出てしまうんだろう。先輩の前で泣きたくなかったのに…先輩、ごめんなさい。)

「先輩、今までありがとうございました。」そう言ってプレゼントを先輩の手に渡すとその場を走り去った。
(これで終わりだ…全て終わった)
明日…先輩に会っても普通に話せるだろうか…。その日は団地の前の公園で思う存分泣いた。
苦しくて、苦しくて…どうにかなってしまいそうだった。
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