2・5次元の彼女
変わらずどうしよう、こうしよう、と小さな不安をぶつけてくる景斗。
私は彼の背中を後押しできるよう、前向きな言葉をキーボードに打ち込んだ。
『会う前から卑屈になるなよ。お前はお前だ。自信を持て』

ああ、どうして他人のこととなると、いくらでも言えるんだろう。
その言葉、そっくりそのまま自分に言い聞かせたい。

私の言葉を聞いた景斗は、多少は心が楽になったみたいだ。
『やっぱりユウさんは優しいね』
どことなく嬉しそうに景斗が呟く。

やがてぽろりと漏らした彼の一言に、私は凍りついた。

『僕、ユウさんが女の子だったら、好きになっていたかもしれない』

えっ!?


何も答えられなくなって、押し黙った私をよそに
『ありがとうユウさん。僕、頑張るよ』
そう言って自己完結した彼は、とっとと個人チャットを終わらせてログアウトしてしまった。

弁解する間もなく閉じられてしまったウィンドウに、私は何もできず呆然とする。

どうしよう。
会いづらい。
もし私が女だと知ったら、景斗はどんな顔をするだろう。

やっぱり私、行かない方がいいんじゃないかなぁ。
でも、行くって言ってしまったし……

私はオフ会当日へ向けて、悶々と頭を抱えることとなった。
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