２・５次元の彼女

景斗は、ベッドから小さく頭を起こし、デスクの上にあるパソコンの画面を睨んだ。
いつの間にか、画面上に薄紫色の人影が現れていることに気づき、しぶしぶ起き上がる。

デスクの前に腰掛けて、景斗はキーボードを叩いた。
『イリーナ、お疲れ』
メッセージを送ると、ややあってイリーナが返事をした。
『景斗おつかれー！』
相変わらず元気だ。
ほんの少し、気持ちが軽くなる。


イリーナの横にはHARUの姿もあるが、抜け殻のように動かない。
HARUのステータスを確認すると『退席中』となっていた。
一体何のために退席しているのか、どことなく想像を掻き立てる。

……やめよう。自分が辛くなるだけだ。


『ユウさんはまだこないんだー？　HARUさんは退席中？　お風呂かな？』
何も知らないイリーナが、残酷な質問を投げかけてきた。

答えない訳にもいかない。
変に自分をごまかすのも嫌だった。

……

しばし悩んだあと、ありのままの言葉をイリーナに伝える。

『ユウさんは、来ないよ。今、HARUさんの家に居るって』

イリーナが沈黙した。その言葉の意味を考えているのだろうか。
次の言葉に困っているのかもしれない。

『家にって、２人で？』
『うん』
『ユウさんとHARUさんの２人きり？』
『たぶんね』

イリーナは再び沈黙して、やがてポツリと呟いた。

『それって、ヤバくない？』