2・5次元の彼女
夜の7時。
なんとか仕事を終わらせた景斗は、岡崎に連れられて会社を出た。
途中、どこへ行くのかと問うても、岡崎は何も答えない。
20分程歩いて案内されたその店は、あまりにもお洒落過ぎていた。

普段、岡崎は飲み屋の内装なんかを気にするようなやつではない。
雰囲気より料理と値段重視のはずなのに。
案内されたその場所は外観からしてスタイリッシュで、店の中に入ると、打ちっぱなしのコンクリートの壁に、やたらゴージャスなシャンデリアと観葉植物。店員はピシっと糊の利いた白いシャツに細身の黒いパンツを着ており、見た目もなかなかに若くていい男だった。
どうやら完全個室のようだ。
受付に飾られていた個室の写真を見ると、部屋には大きなソファとルームランプが置かれていて、とても飲み屋とは思えないムードが醸し出されていた。

明らかに女性うけを意識した店だ。
どうしてこんな場所に連れて来るのだろうと警戒心が湧き上がった。
しかも金曜日の夜、こういう類の店は予約しなければ絶対に入れない。
随分用意周到ではないか。今日、ふらっと飲みにきただけとは思えない。

「どういうつもりだよ岡崎」
店員に案内され部屋に向かう道すがら、岡崎の背中に問いかける。

「ちょっとしたゲストをお招きしててね」
岡崎は飄々と答えた。


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