２・５次元の彼女
「なんだよそれ、聞いてないぞ」
嫌な予感しかしない。

岡崎は振り返ると、不愉快そうな景斗の肩を叩きながら耳打ちした。
「いいか水原。失恋には新しい恋が一番なんだよ。
お前はやる気になれば彼女の一人くらい、いつでも作れるんだからさ。
知ってるか？　うちの女性社員の評判。お前と仲良くなりたいってやつ、結構いるんだぜ？」

店員が部屋の前で立ち止まった。
ノックをしてドアを開け、失礼しますとひと声かけると、ふたりを部屋の中へ招き入れた。

「自覚しろよ！　このモテ男！」
水原にドカッと背中を押され、踏み込んだ部屋には先客がいた。

２人の女性。見知った顔だった。

「お疲れ様！」
そう快活に挨拶をしたのは、同僚の矢野恭子だった。
ひとつ年下の割に大人っぽい雰囲気の彼女は、カッチリしたグレーのスーツを身に纏い、メンズライクかと思いきや、大胆に開いた胸元から隠しきれない豊満なバストが覗いていた。

そしてもうひとり。
「水原さん、お久しぶりです」
そう会釈した礼儀正しい女性は、後輩の三浦綾。
確か年次は３つ４つ下だったか。小柄で童顔な彼女は、矢野恭子とは対照的に、白いフリルの付いたシャツにふんわりとした水色のスカートを履いていて、清楚で可愛らしい装いをしていた。
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