2・5次元の彼女
「お、お疲れ様です」
景斗は状況に圧倒されながらも、なんとか返事をした。

「お疲れ様。まあ今日は楽しく飲もうや」
岡崎が景斗の肩に腕を乗せながら、笑顔を振りまいた。

ソファに座って、景斗と岡崎、矢野恭子と三浦綾が向かい合う。
男女2対2。完全に合コン用の人数比率。
いや、2ペアしかいないことを考えると、合コンよりもずっと重たい意味を持つ気がする。

景斗は女性2人に笑顔を向けながらも、こっそりと岡崎を睨んだ。
視線に気づいているのかいないのか、岡崎は変わらずにこにことしている。


適当に注文を済ますと、4人はまず取っ付き易い会社の話題から入った。
あの部長が嫌だとか、あの後輩が許せないだとか。

酒が運ばれてきて、乾杯を済ますと、次第に話題がプライベートな内容へとシフトする。
最近の趣味どうこうの話をしていて、ふと景斗へと矛先が向く。

「水原さんは、どんな休日の過ごし方をされてるんですか?」
三浦綾の質問に、景斗は答えを詰まらせた。
景斗が一番苦手とする質問だ。
ゲームだなんて答えられないし、他に特に面白い趣味も持っていない。

上手い回答を探しながら言いあぐねていると、岡崎がフォローを入れた。
「こいつ、ホント無趣味でさ。なんか面白いことあったら教えてやってよ」

景斗は申し訳なくも苦笑いで答える。
すると三浦綾が瞳を輝かせた。
「最近私、ビリヤードにはまっているんです」

「へえ。意外だね」
おしとやかそうな彼女がビリヤードとは、イメージが結びつかない。
景斗が驚きの表情をすると
「よかったら一緒にいかがですか」
笑顔で薦められ、特に興味もなかったのだが「そうだね、ぜひ」とりあえず社交辞令で頷いた。

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