2・5次元の彼女
穏やかな会話が続く中、景斗はじわじわと迫り来る眠気と闘っていた。
別に、この場がつまらないという訳ではない。
もう限界なのだ。体力が。
酒も回って余計に疲労感が増す。
オフ会で泥酔した失敗から、飲み過ぎないように気をつけてはいたのだが、少量の酒でもほぼ徹夜のこの身体には堪える。
次第に意識が飛び飛びになる。
まずいな……
そう意識し始めたときには遅かった。



まどろみの中で、気配を感じた。

誰かがそうっと眼鏡に触れる。
外されたところで、ゆっくりと目を開いた。

ぼやけた視界の中に、ぼんやり女の子の顔が浮かぶ。

「ユウさん?」
思わず呟いて、はっとした。

まずい、寝てしまった。

違う人の名前まで口走ってしまった。

こちらがしまったという顔をすると、向こうも同じように焦りの表情を浮かべた。

「ご、ごめんなさい、起こすつもりは……!」
慌てふためいた綾は、ソファにもたれる景斗の足元に膝をついてしゃがみ込みながら、奪った眼鏡をぎゅっと握り締めた。
「あの、寝ていると、眼鏡が邪魔なんじゃないかと思って、ごめんなさい!」
そう言って、景斗の目元に眼鏡を戻す。

この際、眼鏡はどうでもいい。
綾の居る位置が問題だ。
床にしゃがみ込むのは良いとしても、何故自分の膝と膝の間に居る?

近い。
あまりの距離感に、景斗はごくりと息を呑んだ。
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