2・5次元の彼女
「すみません、せっかくお時間割いていただいてるのに……」
なんとも切ない表情をしているもんだから、景斗は悪いことをしたような気持ちになり、罪悪感に苛まれる。
「あの、水原さん」
おずおずと綾が何か言いたげに景斗を見上げた。

「また、ご一緒してもらえますか?」
綾が膝を立てて背筋を伸ばした。
顔の距離がぐっと近づく。

どうしてこんなに近いんだ。
景斗はどぎまぎとしながらも、動揺を悟られないよう奥歯を強く噛む。

綾の手が、景斗の胸元に触れた。
思わず手を支えたら、なんだか握り返すような形になってしまい、しまったと思う。

「……もちろん」
短く答えるのがやっとだった。

その言葉を聞くと、綾は安心したように、ほっと口元を緩めた。
それでも、きらきらと潤んだ瞳で、こちらを見つめ続ける。

この空気感は、遠い昔に何度か体験したことがあった。


これは、もしかして。
僕のそういうアクションを待っている?

景斗は焦らされているようで、気が気じゃなくなる。


……キスした方がいいのか?
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