2・5次元の彼女
「水原さん」
綾が景斗を見上げて、遠慮がちに口を開いた。
「さっき言ってた『ユウさん』って、水原さんの片思い中の人ですか?」

そんな話まで知っているのかと、景斗は驚いた。
昼に岡崎に話したばかりなのに。
一体いつの間に伝わったんだろう。
自分が寝ている間にでも、岡崎が話したのだろうか。
他に何を噂されていたのかと考えると、背筋が寒くなる。

「ええ、まあ」
景斗は苦笑いで答えた。

「諦めてはいないんですか?」
彼女の問いに
「諦めないといけないんですけどね」
景斗は失笑しながら遠い彼方を見つめる。

「じゃあ」
綾が景斗の顔をじっと見上げながら、囁いた。
「その人のこと諦められたら、私と付き合ってもらえませんか?」


直球過ぎてびっくりした。思わず彼女の顔を見る。

「今すぐなんて、言いません。私、いくらでも待ちますから」

健気なことを言う綾に、景斗はなんて言葉をかけるべきか迷った。

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