2・5次元の彼女
出会った頃はあーだったとか、あのときの狩りが悲惨だったとか
2年間分積もりに積もった思い出話をしていたら、思いの他盛り上がってしまった。
「今日は帰さないよー」なんて言って、イリーナは私の肩口に飛びついてくる。

「おい、こらセクハラ男。ユウに飛びつくな」HARUの呆れた目に
「俺は若くて可愛いからいいんだよー! ユウさんも嬉しいでしょ?」そんな調子のいいことを言ってイリーナはおどける。

イリーナが帰りたくないと駄々をこねたから、場所を移して2次会をすることになった。
お会計を済ませて外に出たときには、すでに景斗の足取りがフラついていて、HARUが彼の肩を支える。

「景斗、だいじょうぶ?」
私が心配して覗き込んでみると、目を移ろわせてぼんやりとしている景斗の顔。

ひょっとして、もう泥酔の域なんじゃないだろうか。
本当に大丈夫かな?

私がHARUの反対側に回って景斗の肩を支えようとすると、HARUは慌ててその申し出を断った。
「いいよ、ユウ。俺ひとりで平気だから」
「でも、大変でしょう?」

すると彼は柔らかな笑顔を浮かべた。
「大丈夫。可愛い女の子に重たい仕事はさせられないよ」

その言葉を聞いて、私の心にパッと満開の花が咲く。

可愛い!?
可愛いって言ってくれた!?

平静を装いながらも、口元が綻んでいたかもしれない。
心の中で飛び跳ねながら、悟られないように唇を引き結んだ。


やがて私たちはイリーナに案内され、繁華街を抜けた裏路地にある雑居ビル4階のダーツバーへとやってきた。
大学生のくせに、こんなひと気のない立地にある隠れ家的な店を知っているなんて、普段どんな遊び方をしているんだろうと疑ってしまう。
ダーツバーにつくと、フロアの端にあったソファに景斗を寝かせた。
HARUはその上に自分のコートをそっとかけてやる。

ゲームの中の彼と同じ。
面倒見が良くて、優しくて、頼りになるお兄さん。

私は幸せでいっぱいだった。
現実にHARUがいる。
私の目の前で、笑っている。
そんなことを考えながら、HARUの横顔ばかり見つめていた。

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