2・5次元の彼女
投げやりな言葉。

明らかに本心ではないユウの言葉にそのまま帰してはいけない気がして、慌てた景斗は気がついたらユウの腕を掴んでいた。

「!? な、なに!?」
驚くユウ。

「あ、いや……だって、放っておけないよ」
それでもやはり自信を持って彼女の目を見ることはできなくて、しどろもどろになる。
「どうして? 景斗には関係ないじゃない」
少なくとも景斗よりは強い口調で返したユウに、あっさりと競り負ける。

景斗にとっては関係なくなんかなかった。
今まではユウのためを想って応援してきたが、HARUが結婚しているとなると話は別だ。
そんな関係を続けていて良い訳がない。

「ねえユウさん。もしかして、まだHARUさんと2人きりで会うつもり?」

ユウは何も答えなかった。が、沈黙こそが肯定の証だろう。

「だってHARUさんは結婚しているんでしょ? ユウさんのこと真剣に考えての行動とは思えない」
「景斗こそ! 私のこと真剣に考えてくれてなんてなかったじゃん!」
ユウはその手を勢いよく振り払った。

「すぐに新しい彼女ができて幸せいっぱいの人には私の気持ちなんてわかんないよ!」

そう叫んで身を翻すユウ。

その通りだ。
自分で勝手にユウから逃げ出して、さっさと別の女性に乗り換えたんだ。
信頼を失うには十分だ。こんな自分が、これ以上何かを言ったところで彼女の心に届くと思うか?

かといってこのまま彼女とさよならする訳にもいかなくて。
玄関から飛び出そうとするユウの肩を景斗は今度こそしっかり掴んで引き止めた。

「お願いだから、話を聞いて」
< 152 / 241 >

この作品をシェア

pagetop