2・5次元の彼女
お酒と簡単なつまみがいくつか並んで、テーブルの上が少し華やかになったところで、HARUはグラスを片手にふらりと寝室の方へ向かった。

「今日、久しぶりにログインしたんだけどさ」
開いた寝室のドアからHARUのパソコンが見えて、そこにはゲーム画面が映し出されていた。

「ここんとこ、仕事で忙しくて全然入れなかったから、久々にみんなに挨拶しようと思ったのに、誰も来なくてさぁ」
いつもの薬屋の横、待ち合わせの場所に、HARUのキャラクターだけがぽつんと座っているのが見えた。

「そっか、今日、勉強会でみんな集まってたから」
「勉強会? 何それ?」
「イリーナの英語の課題を手伝う会。強引に呼び出されたの」
「お前ら、そんなことやってたんだ」
高校生じゃあるまいし、とHARUは吹き出した。

私はソファに座りながら、寝室の壁にもたれてグラスを傾けているHARUの表情を覗き込む。
「……怒らないんだ?」
「何が?」
「景斗と会ったのに」
「イリーナも居たんだろ?」
「まあ、そうだけど」

いつもと変わらないHARUに安心しながらも、以前に見せた景斗に対する異常なまでの執着心が忘れられずに引っ掛かっていた。
「なんだかすごく、景斗のこと、気にしているようだったから」

私の指摘に、HARUは少し申し訳なさそうに目を伏せる。
「少し過敏になり過ぎてたかな。すまない」
ゆっくりとこちらにやってきてソファの隣へ腰掛けた。
「夕莉があまりにも景斗景斗って言うから。ただの嫉妬だよ」



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