2・5次元の彼女


「そろそろ起きる時間なんだろ?」
「……あと5分」

カーテンの奥から白んだ光が差し込んで、フローリングの床には隙間から漏れた鋭い光の直線が描かれていた。
ベッドの中で、彼の身体にもそもそと足を絡めながら、私は迫る仕事の時間に抗う。

「いいなあ、HARUはお休みで」
「夕莉の場合は、土日こそ稼ぎ時だろ?」

そりゃあそうなんだけど、そんなことを言ってるんじゃない。
このまま、ふたりでのんびり、一日中寝てられたらなって。
せめて休みの日が同じなら、そんなささやかな願いも叶えられるのに。
私とHARUの生活スタイルじゃあ、一生そんな贅沢な一日は訪れないかも知れない。

「……行きたくないなあ」
「じゃあ仕事、休んじゃえば?」
「だめだよ、ズル休みは」
「……真面目で良い子だな」

彼の肩口を枕にふてくされていると、彼は私の背中を優しくさすってなだめた。
「またデートに行こう。前みたいにカメラを持って。
次はきっと夜だろうから、綺麗な夜景を撮りに」
「突然どうしたの?」
「……うん?」

私がうつ伏せに転がって彼の方へ顔を上げると、彼も横向きに肘をついて頭を起き上がらせた。
朝の光の下で眺める彼の素肌はなんだか新鮮で、いつも以上にドキドキしてしまう。
同時に自分の身体も見られているんだということに気づいて、肌掛けを深く被った。
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