2・5次元の彼女
「景斗、だいじょうぶ? どうしたの?」

私が恐る恐る声をかけると、景斗はピクリと肩を震わせた。
こちらを振り向いた彼の瞳には、いっぱいに溜まった涙。

「どうしよう、イリーナが男だったよ。
僕はもう死んでしまう」

眼鏡にパタパタと涙の粒がこぼれる。

大人の男の泣く姿はあまりに異様で、私は一瞬引いてしまった。
が、これは景斗だ。あの、ちょっと臆病で優柔不断で心配性な、魔法使いの景斗だ。
それを思えば、そんなに不思議なことではないかもしれない。

相変わらず世話が焼けるなあと、私は彼の隣に腰掛けた。

「景斗、落ち着いて、ほら」
ポケットからハンカチを出して彼の前に差し出す。

「だって、ずっと彼女のことが好きだったんだ。
それなのに、男だったなんて。
ユウさんは知ってたの? どうして教えてくれなかったの?」

しゃくりあげる景斗。頬を涙の粒が零れ落ち、仕方なく私はそれを拭う。
「私だって、知らなかったよ。
でもよくあることじゃない。
ネットと現実で性別が違うってさ。
現に私だって……」

言いかけたところで、景斗はハッと顔を上げて私を睨みつけてきた。
「そっか、ユウさんも、女だって隠してたもんね。
酷いよ、ユウさん。親友だと思ってたのに」
そう言って景斗はより一層落ち込んだ。
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