2・5次元の彼女
頬杖をついて、たそがれる景斗を黙って見つめていた綾が、やがてポツリと呟いた。
「以前にも、そんなようなことを言っていましたね。諦めないといけないって」

短く頷いてわずかに目線を送る景斗。
が、視界の隅に捕らえた彼女の表情が予想以上に固く引き締まっていて、思わず二度見する。

「全然、諦められてないですよね?」

「え……?」

不躾な彼女の問いかけに、景斗は身を強張らせた。
頬杖をついた顎がわずかに手のひらを離れ、宙に浮いたまま固まる。

「本当は、まだやりきってなくて、出来ることはたくさんあるのに、無理やり押し殺してる……そうなんじゃありませんか?」

「……」

彼女の言葉に絶句する。
何より、礼儀正しくおしとやかに見えた彼女が、ここまで意思の強い瞳を持って責め立ててくるとは思いもしなかった。

「……えと。
押し殺しているというか、僕は彼女に対して何の影響力もないというか……
僕が何かをしたところで、どうにもならないというか……」
「それは言い訳です」
やっとのことで搾り出した説明をバッサリと切られ、景斗は何も言えなくなる。

「それで、水原さんは納得しているんですか?
出来ることはやり切った。後悔はない。
自信を持ってそう言えますか?」
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