２・５次元の彼女
「悲しいですけど、そんな不器用さも水原さんらしいです」

物悲しい瞳をしながらも、一生懸命笑ってくれている彼女が愛おしかった。
だが。ダメだ。慰めの言葉はかけられない。
これが、散々迷って彼女を振り回した自分に対する業だと、景斗は目を閉じた。

「本当にすみませんでした。僕がはっきりしないばかりに……」
テーブルに手をついて頭を下げた景斗に
「謝らないでください」
彼女は慌てて手を振る。

「さ、お料理、まだ残ってますから。食べましょう。この煮物美味しいですよ。取りましょうか？」
綾は景斗の前に置いてある空いた小皿を手に取ると、煮物の美味しそうなところを丁寧に選び取りながら盛り付けた。
ふたりの長い話が終わるのを待っていた料理たちはもうすっかり冷めてしまっていたけれど、悩み迷っていたときに口にした出来立ての味よりもずっと美味しく感じられた。

「うん。美味しい」
「よかった」

ふたりの間に笑顔が戻る。

和やかに食事を楽しみながら、相変わらず「ごめんなさい」と「ありがとう」を繰り返す景斗に、綾は笑顔で頷きながら、くすくすと可笑しそうに笑っていた。

店を出て近くの駅まで彼女を送り届け、「お疲れ様」なんて言い合いながら、今日という日を終わらせた。
もう二度とこうやってふたりで会うことはないかもしれないが、そんな雰囲気を感じさせない別れだった。

最後まで悲しい顔をされなくて良かった。

そんなことを考えながら、どうか帰り道、彼女が涙を流さないようにと、景斗は祈った。
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