2・5次元の彼女
玄関の前まで辿り着くと既に門戸は開かれていた。
腕を組んでドア枠に背中をもたれるHARU。
片足を蹴り飛ばす格好でドアを開け放つその姿は、決してお行儀が良いとは言えない。

「よお景斗」

乱暴な仕草とは似つかわしくない軽快さ。
声をかけてきたHARUに、景斗は感情のない眼差しを送った。

「何の用かはわかりますよね」

低い声色。ただならぬ空気をまとう景斗の様子から、どんな応対をすべきかHARUは悟ったようだった。

「不躾だなあ。アポイントもなしに」
唇の端を上げて、だが瞳は全くもって笑ってはおらず、文字通り嫌な笑みを浮かべる。
少し上向いた顎が、なんとも高圧的な印象だ。

「長居するつもりはありません」
景斗が短く答えると、「そのつもりで頼む」とHARUは背を向けた。
「これから来客があるんだ」
やれやれといった風に肩を竦めながら、HARUは玄関から続く廊下をリビングへ向かって歩いて行った。

この様子からみると、どうやら今現在ユウは来ていないらしい。
ひょっとしたらその来客というのがユウなのかもしれないが。

彼の後に続いて、景斗はリビングへと足を踏み入れた。
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