2・5次元の彼女
相変わらず広々とした立派なリビング。
そこに佇むこの部屋の主は堂々としていて、その存在感を存分に際立たせていた。
気分はまるで魔王城に迷い混んでしまった見習い戦士。
だが、ここで尻尾を巻いて逃げるわけにはいかない。
ゲームオーバーになるまで戦い続けるつもりだ。

HARUが台所へ向かった。カウンターキッチンの窓から冷蔵庫を開ける姿が見える。
「ウーロン茶でいい?」
ガチャガチャと食器の重なり合う音がして、HARUは2つのグラスとウーロン茶のペットボトルを持って戻ってきた。

「HARUさん……ユウさんに全部聞いたんだ」
リビングの入り口に立ったまま本題を切り出す景斗。

「……そうか」
HARUは目も合わせず一言答えると、グラスをテーブルの上に置いて、新品のペットボトルの蓋をギュッと回す。

「ユウさんを解放して欲しい」
景斗がはっきりとそう言うと、さすがにHARUはぴたりと動きを止めた。

「……解放って……」
聞き捨てならないとでもいうように、景斗の方へ向き直る。

「拘束しているつもりもないんだけど。
それ、本人に言えば」

冷静に、淡々とHARUは答えた。
笑顔もなければ怒りもない、何の感情も読み取れないHARUの表情。
それは威圧感なのだろうか。
嵐の前の静けさとでも形容すべきか、初めて景斗はHARUを怖ろしいと感じた。

が、怯えてもいられない。
「……わかるでしょう? HARUさんが求める限り、ユウさんは離れられない」
もちろん素直に引き下がる訳にはいかない。
そんな生半可な覚悟でここへ来たわけじゃない。
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