2・5次元の彼女
「ユウさんを解放しろ」
力強い景斗の言葉に、ああ、私は庇われているんだ、と分かった。

「その言葉、そっくりそのまま返すよ」
感情を押し殺したようなHARUの声がやたらに響いて聞こえる。

「写真を消せ。今すぐ」
「まずその手をどけろよ」

ふたりのやり取りを、景斗の腕の中で、黙ったまま聞いていた。
……動けなかったと言った方が正しいかもしれない。
初めて知る景斗の腕の力強さに、ただただ呆然としていた。

「あなたが消さないなら、僕が消す」
「彼女、怯えてんじゃん。離せよ」

応酬の果てに、景斗は突然私ごと立ち上がった。
「きゃっ……」
よろめく私の手を引きずって、そのままつかつかとリビングへ上がり込む。

「おい! 景斗」
HARUの制止も聞かず、景斗は歩みを止めない。
目指した先は――

……寝室?

景斗はパソコンデスクの横でその足を止めた。
正面のラックには写真立てがいくつか飾られており、傍には高価なデジタル一眼レフカメラが置いてある。
HARUにとって大切な、お気に入りの……

「あ、あの、景斗?」

行動の意図が分からず。私は恐る恐る黙ったままの景斗の背中に問いかけた。
覗き込もうとする私に、彼は横目で応える。

「ユウさん、撮られたカメラってこれ?」
「え? そ、そうだけど」

頷いた私を確認すると、景斗はその一眼レフを持ち上げて、高らかに振りかざした。
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