2・5次元の彼女
「おい!」
声を上げたのはHARUの方だった。
「何がしたいんだ、お前は!」

急いで駆け寄ってきたHARUだが、景斗の予測不能な行動に思わず足を止める。
刺激してはまずいと感じ取ったのか、景斗と少しの距離を保って立ち尽くす。

「カメラごと、写真を消してやる」
答えた景斗の声は本気だった。
私の方がどうしたらいいのかとおろおろしてしまう。

「馬鹿。冷静になれって」
今にもカメラを地面に叩き付けようとしている景斗にうんざりした表情をするHARU。
そりゃあ焦りもするだろう。素人目で見ても高価そうなカメラだ。
壊された日には、何万……いや、何十万の損失かもしれない。
が、それ以上に、普段穏やかな景斗が感情を荒ぶらせ、実力行使に出ようとしていることに動揺しているのかもしれない。

「景斗、そんなことしても何にもならない。
だいたい、電子データなんだから、カメラを壊したところでどうにかなる話じゃ……」

「だったらパソコン丸ごと壊してやる!」

景斗の視線がパソコンへと向かった。
今の景斗ならやりかねない。パソコン本体ごと投げ飛ばしそうな剣幕だ。

「だから! 落ち着けって」
苛立ちと焦りを含むHARUの声。

景斗は近くにあったルームランプに手を伸ばした。スチール製でそこそこの大きさがある。
乱暴にコードをコンセントから引き抜くと、パソコンに向かって振りかぶった。
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