2・5次元の彼女
「わかったから! いちいち壊そうとするな!」
負けたのはHARUの方だった。

その声に弾かれて、景斗の腕がぴたっと動きを止めた。

それを見たHARUはひとまず安心したように肩で大きくため息をついて、やれやれといった様子で髪を掻き上げた。

「ユウがそうして欲しいって言うなら、写真を消す。それでいいか?」
「……本当?」
「本当だ。約束する」

景斗は警戒の色を収めぬまま、じっとHARUを睨み見た。
その言葉が真実であるか、顔色をうかがっているようだ。

しばしの沈黙。そして緊張。
ごくりと喉のなる音でさえ、部屋中に響き渡ってしまいそうだ。

後押しするようにHARUが囁く。
「今まで、俺が約束破ったことはなかっただろ?」
「……」

景斗はHARUの言葉を信じたようだった、ルームランプを下ろすと、パソコンデスクの上に置く。

「もうひとつ、約束してください」

その険しい表情を崩さずに、景斗は静かに続けた。

「ユウさんを大切にすると誓ってください。
ユウさんを、一番に、愛してやってください」

その言葉に私は大きく目を見開いた。
「っ景斗!?」

が、おそらく驚かされたのはHARUの方だろう。

「一番って……」
呆然とした声で呟く。


一番っていうことは……
HARUの子どもや、家族よりもということで……
その言葉が意味するところは、ただひとつ――
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