2・5次元の彼女
もう一度、景斗は足を止めた。
今度は、私の方を向いて。

「勝手なことしてごめん」

私のために、尽くしてくれたはずの景斗は、とても申し訳なさそうな顔をしていて
何故だかすごく、苦しそうだった。

「ユウさんに、辛いもの見せて、ごめん。
追い詰めて、ごめん。
全部、僕のわがままだ」

握られた私の手に、ぎゅっと力がこもる。
まるで、心臓を掴まれているようだ。
苦しむ景斗の表情とともに、軋むこの手のひらとともに、私の胸も、痛い。

頭では理解できている。
景斗にありがとうと言わなければ。
私のために、慣れない喧嘩をHARUへ吹っかけてくれたんだ。

あの頼りなくて私に守られてばっかりだった景斗が。
ちゃんと私を、助けにきてくれたのだ。

そうなんだよね?

「……私のために、してくれたんでしょ?」

私は精一杯微笑んだ。だけど、憔悴の色は隠しきれなかった。
そんな私を見て、景斗は目を逸らしながら唇を噛む。

ああ、景斗にバレバレだ。
私の心の中の悲壮。
HARUのことが、諦めきれない。

私のことを幸せにすると言ってくれなかったHARU。
失望したくせにどうしてだろう。
どうしようもなく、愛おしい。
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