2・5次元の彼女
何を言っているんだろう、景斗は。

だって、景斗には彼女がいるんでしょ。

一番に守らなきゃいけない人がいるのに、どうしてそんなことを言うのだろう。


もしもここで私が、景斗に甘えたら

景斗はどうするのだろう。

私を受け入れてくれるのだろうか。

私を必要としてくれる? 私だけを見てくれる?


そしたら、景斗が今付き合っている彼女はどうするの?

私を選んでくれるの? 彼女を捨ててくれる?

また、哀しい別れを、この世にひとつ、生み出してしまうのだろうか。

そんなバカらしいことったら、ない。


「そんなに心配しなくても、だいじょうぶだよ」

私は言った。
今度こそ、本当に、ちゃんと笑って見せた。

「私はひとりでも平気だから。ね?」

沿道を囲む木々の葉がさぁっと音を立てて、風が髪を揺らした。
別れの似合う、冷たい冬の風。

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