2・5次元の彼女
少し緊張した面持ちの景斗。
そうか、こうしてちゃんと向き合うのは、あの日以来なんだ。

「久しぶりだね。1カ月ぶり?」
私はなるべく明るい調子で景斗に笑いかけた。
もう大丈夫だよ、という意味もこめて。

午前の強い日差しを浴びて眩しそうに目を細める景斗。
「ゲームの中ではしょっちゅう会ってるくせに、不思議な感じだね」
彼の髪は降り注ぐ光でさらさらと輝いて見えた。
青空の下の景斗っていうのも、なんだか新鮮で面白い。

「ゲームと現実は違うもん。なんだか別の世界で別の人と話をしているみたい」
「ユウさんは性別からして違うからね。僕はそれほど大差ないでしょ」
「そんなことないよ。ゲームの中の方が生き生きしてる」

私が言うと、景斗は「なんかそれ、だめなヤツじゃん……」と呟いて膝に頭を突っ伏した。

「景斗はダメなヤツだよ。今さら気づいたの?」
「現実のユウさんにそう言われると、ショックもひとしおだよ」

しょんぼり落ち込んだ景斗を見て、私は、ははっと笑った。

笑い声が渇いた風に吹かれてどこか虚しく聞こえた。
いや、そう聞こえているのは私だけだろう。

こうしている時間が決して楽しくないわけじゃないけれど。
それでも何故か、心の底から笑えないのは。
相変わらず埋まらない、私の胸の内のせいだ。

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