2・5次元の彼女
「ユウさんは、1カ月間、元気にしてた」
ふと景斗が私に気遣わしげな笑顔を向けた。

「うん。元気だったでしょ? 私」
胸を張ってそう答えた。

そう見えるようにしてきたはずだ。
普通にゲームにログインして、普通にみんなと遊んで。
あれからHARUはゲームの中に姿を見せなくなってしまったから、私とイリーナと景斗の3人だけになってしまったけれど。
それでも気にする様子は見せず、みんなとはいつも通りに接してきた。


元気を演出する私とは対照的に
「……渡さなきゃいけないものがあるんだ」
突然、景斗が声のトーンを低くした。
急に真面目な瞳になった彼に、一体何事かと目を見張る。

何だろう。嫌な雰囲気。

悪い予感がする。
でも何が起こるか想像もつかなくて、無駄に不安ばかりが広がる。

景斗は、肩にかけていたバッグのチャックを開けると、一枚の封筒を取り出した。

「これ」
「……?」

私が受け取ると、その封筒には少し重みがあった。
四角くピンと張っていて、何か固いものが入っていると予想がつく。
手紙とかそういう類のものではなさそうだ。

「これなに?」
「渡してくれって頼まれた。
……HARUさんに」
「!?」

久しぶりに他人の口から聞かされた彼の名前に、鼓動が騒いだ。
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