２・５次元の彼女

第２章 彼女が僕に求めるもの

＊＊＊第２章＊＊＊



オフ会の翌朝。
景斗が目を覚ますと、見知らぬ天井が広がっていた。
起き上がろうとしたその振動でこめかみの辺りがズキンと痛んで、思わず呻き声を漏らす。

「目が覚めたか？」
開きっぱなしのドアから姿を現したのは、見知った顔。

「HARUさん」
景斗はズキンズキンと規則的に脈打つ頭を押さえながら、その人物を見上げた。

HARUはドアの淵に背をもたれながら、穏やかな眼差しで景斗の様子を観察する。

「二日酔い？」
「……みたいです」

HARUはフッと小さく笑みを溢すと、再び部屋を出る。
程なくして彼は水の入ったグラスを持って戻ってきた。

「夕べのことは覚えてる？」
「……うーん……」

差し出されたグラスを受け取りながら、景斗は夕べの記憶を辿る。
そもそもこの場所に来た経緯が思い出せない。

「記憶、ないかも……」
「どのあたりから？」
「はっきり覚えてるのは、居酒屋でイリーナが２本目のワインを開けたあたり……」
「そうか……」

記憶がないというのは不安なもので、ましてやHARUが深刻な表情をしたものだから、なんとなく自分が何かまずいことをやらかしたのではと予想がついた。
「あの、あれから何があったんでしょうか？」

心配そうな顔をする景斗に
「いや、何ってことはないんだが……うん……」
なにやら言いづらそうに口ごもるHARU。

が、それ以上何も語ろうとはせず、
「とりあえず、ユウには謝っておけ？」
そんな不安を煽るような一言だけを残した。


僕はユウさんに、一体何をしたんだ。


言い知れぬ不安を胸にHARUの家を出た景斗は、自宅に戻るなりパソコンの電源を入れた。
言われた通り、ユウに謝らねば。
だが、何度メッセージを送っても、彼女から返事がくることはなかった。

メッセージに気が付いていない？
いや、そんなはずはない。
なんだか、無視されているような……

ひょっとして
ユウさん、めちゃめちゃ怒ってる？