2・5次元の彼女
「ユウさん、ひょっとして、HARUのこと……」

景斗の言葉にユウは頬を赤くさせて、黙ったまま頷いた。

対する景斗は、熱を帯びていた身体が一気に冷静さを取り戻して、逆に寒いとすら感じている。

「そうだったんだ」
天国から地獄へ突き落とされて、もう笑うしかない。
景斗は呆然としながらも、へらりと引きつった笑みを浮かべた。

ユウはなおも健気な瞳で景斗を覗き込んでくる。
「どうやったら、HARUは私のことを見てくれると思う?」

「そうだなあ……」
なんとも答えようがなくて、景斗は頬をかいた。

不条理だ。
じわじわと胸のうちから怒りとも悲しみともつかない感情が湧き上がってくる。

自分には子どもであることを望んでおきながら
結局は大人であるHARUのことが好きだなんて。
ひどいな、ユウさん。

胸が締め付けられるのを感じ、途方に暮れる。
「……なんだか、昔と立場が逆転しちゃったね。
前は僕がユウさんに、イリーナのことを相談していたのに」

すると、ユウは少しむすっとした顔で「だって」と呟いた。
「随分と手馴れたキスだったから。
さぞ恋愛経験豊富なのかと思って」

「え……」
景斗は再び困惑する。

手馴れているだなんて、とんでもない。
僕は一体ユウさんに、どんなキスをしたんだろう……
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