2・5次元の彼女
その日、私は仕事が休みだった。
土日勤務の私に合わせてわざわざ平日の夕方に予定を組んでくれたのだ。
HARUの家の最寄り駅でひとり、仕事帰りの彼を待つ。

「ユウさん、はっけーん!」
先にその場に辿り着いたのはイリーナだった。
ほんの少しでもHARUとふたりきりになるチャンスを狙っていた私は、がっくりと肩を落とす。

イリーナが大きなリュックを背負い直しながら私の元へとやってくる。
ずいぶんと重たそうだ。一体何が入っているのだろう。

「何入ってるの? それ」
「教科書。一応大学生だからねー」
「ちゃんと勉強してたんだ」
「あ、ユウさん、俺のことチャラチャラ遊んでるって思ってたんでしょう? 失礼だなぁもう」
心外だな、というように唇を尖らせるイリーナ。

間髪入れず、背後から低い声が響いた。
「お待たせ」

振り返るとHARUの姿。
彼はスーツに身を包んでいた。
初めてみるその姿は新鮮で――

――か、かっこいい……!

前回のカジュアルな装いから一転、知的な男性へと変貌したHARUに、きっと同じような感想を抱いたであろうイリーナが声を上げる。

「うわー、HARUさん、真面目そう!」
「サラリーマンだからな」

そう言って、HARUはネクタイの結び目を緩める。
そんな何でもない仕草ですら格好良く見えてしまう私は重症だ。

さ、行くぞ、とHARUは私たちふたりを先導した。
「景斗は少し遅れるらしいから、うちに直接くるってさ。先に行って買い物してよう」

私たちは近くのスーパーで夕食と酒とおつまみを買って、HARUの家へと向かった。
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