2・5次元の彼女
「えっと、それでですね」
景斗は話を元に戻す。
「その女性には、他に好きな男性がいまして」

笑顔が一転、ユウは不安そうな顔をする。

「片思いってこと?」
「そういうこと、です」

頷いた景斗に、ユウはうーんと唸り声を上げながら腕を組んだ。

「その場合、景斗の性格からして、相手の男性に譲ってしまいそうだよねぇ」
「何より、彼女の気持ちもありますからね……」
「想いは伝えたの?」
「……いえ」

言える訳がない。
伝えたからといって、どうにもならないことは目に見えている。
自分の気持ちを伏せることが最善――

「想いを伝えて彼女を困らせるくらいなら、何も言わずに応援してやるのが、筋ってものだよね」

景斗は自嘲の笑みをこぼした。
こんなことわざわざ相談しなくても、正しい答えはとっくに分かっている。

が、予想を外して、ユウはその意見に賛同しなかった。
「景斗はそれで、割り切れるの?
できないから悩んでるんでしょ?」

鋭いところを突かれて、景斗はギクリと身を硬くする。

「カッコ悪くてもいいよ、困らせてもいいからさ。
景斗が一番、幸せになれそうな方法を探してみてよ」

ユウが景斗の前に両手を差し出してきた。

え?

何を求められているか理解できず、とりあえず彼女の素振りを真似てみると、宙ぶらりんな景斗の両手をユウはぎゅっと握りしめた。

わっ!

突然触れられて、景斗は心臓が跳ね上がる。

景斗の両手を包み込みながらユウは困った顔で笑う。

「少なくとも私は、景斗の幸せを望んでいるからさ」
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