2・5次元の彼女
夕食を食べて帰るころには、もうすっかり遅くなっていて
よくよく時間に換算すれば、結構な長さをHARUと共有していたはずなのに、まだまだ物足りないと感じてしまう。

「家まで送るよ」
そう言ってくれたHARUの言葉が嬉しくて仕方がなかった。
少しでも長く一緒に居たい。


HARUは私のペースに合わせながら、ゆっくりと歩いてくれた。
「わざわざごめんね、遠くまで送ってもらって」
申し訳なさそうに言う私に
「全然。俺の家からも結構近いことが分かったし」
迷惑がる素振りもなく、HARUはいつもの笑顔で答えてくれた。

けれど時間は容赦ない速度で私たちを追い越していく。
じわじわと家までの距離が短くなり
いつの間にか、もうすぐそこは私の家。

「家、ここだから」
「そっか。今日はお疲れ」

私たちはマンションの前で立ち止まった。
今日があまりに幸せすぎて
終わらせるのが惜しくて仕方ない。

「ねえ、HARU」
私は試しに言ってみた。
「上がって、休憩してく?」

HARUはふっと笑って首を横に振った。
「……今日はやめとく」

「……そうだよね」
断られるのは分かっていたというのに、実際口にされるとショックが大きくて、私は早口でごまかした。
「もうこんな時間だし、明日会社だし、早く帰った方がいいよね!?」

やだ、何期待してるんだろう。
焦り過ぎ。私たちはまだそういう関係じゃない。
< 69 / 241 >

この作品をシェア

pagetop