2・5次元の彼女
『会ってみなければ何も始まらないぞ。勇気をだせ』
私は景斗を叱咤しながらも、自分のことを棚に上げて何偉そうなことを言っているんだろうと、パソコン画面の前でため息をついた。

『そうだね』
景斗は頷く。
『その代わり、ユウさんも絶対来てね? 傍にいてね?』

心細いのだろうか。不安げな景斗の言葉に、本当に甘えん坊だなあと苦笑する。
『わかった』
私は渋々了承する。
これでHARUに私の正体――女であるということを打ち明けなければならなくなってしまった。

私の葛藤をよそに、景斗はぽろぽろと細かな悩みをチャットの上に溢していく。
『どうしよう、何を着て行ったら、格好よく見えるかな?』

それは私のセリフだ。
頭の中でクローゼットの中身を思い浮かべながら、脳内ファッションショーを繰り広げる。

可愛く見えそうな服はあっただろうか……?
仕事場ではかっちりしたジャケットばかり着ているから。

何しろ、HARUとの初対面だ。
下手な格好はしていけない。

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