幸せそうな顔をみせて【完】
 次第に明るくなっていく朝の光が部屋輪郭を次第に形作っていく。そんな中、副島新の横顔は…。


 綺麗だった。


 こんなにゆっくりと副島新の顔を見たのは初めて。同期の男の人の顔を凝視するわけにもいかないけど、今は副島新の顔を私は誰に遠慮することもなく見つめていた。好きだと言う気持ちは私の予想以上に大きくなっていて、本当はこんなことをしてはいけないと思うのに、私の衝動は止まらなく暴走しかけていた。


 でも、少しは抵抗を見せたけれども、私はその気持ちに素直に動いてしまう。私は副島新の唇に自分の唇を重ねていた。 


 微かに一度触れ、もっと近づきたくてもう一度唇を重ねる。重なった唇が熱く感じ、離れようとすると胸にチクリと痛みを感じた。何度かキスをしていると、すっと伸びた副島新の指が私の髪に絡み、キュッと引き寄せられた。


 吃驚して、身体を離そうとすると、少し離れた唇から掠れた声が聞こえた。


「まだ足りない」


 寝ていると思ったのにいつの間にか起きていて、もしかしたら実際は寝てなかったのかもしれない。


 でも、そんなことを考えている間は一瞬で…私の唇は副島新の唇に捕えられ、何度も角度を変えて重なりあっていた。右手は私の後頭部を、そして、左手は私の腰をキュッと抱き寄せ、シーツの上をスルリと流れるように私の身体は滑り、副島新の腕の中にいた。


 隙間のないくらいに抱き寄せられた今も唇は重なったまま。


「ちょ…」

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