幸せそうな顔をみせて【完】
 低く掠れた甘い声が寝室の空気に溶けていった。いつもの凛とした声も好きだったけど、こんな風に私のことを思いながら囁くように零れる声は色香を増し、甘さが私の箍を外していく。


 いつもの私も、強がる私も、今はどこにもなく、ただ、副島新に愛される私がそこにいる。


 息も出来ないくらいに強く抱きしめられ、私も副島新の首に自分の腕をゆっくりと絡め、離れたくないと、抱きしめた。私が腕を回すと、それが合図だったかのように副島新の唇は強く私の唇に押し当てられ、その合間にもゆっくりと繊細な指が肌を撫でていく。


 その繊細な指の動きに耐え難いほどの疼きが次第に私の身体を熱くしていき、実際にやけどしてしまうのではないかと思うくらいに熱く、チリチリと焦げるようだと思った。


「熱い」


 身体が燃えて溶けてしまうのではないかと思うくらいに熱い。


 そんな熱は私の最後に残った羞恥心も何もかも根こそぎ奪っていった。さざなみのようにゆっくりと押し寄せる熱を私は何度も身体に感じ、目を閉じたまま、副島新を感じていた。


「葵」


 次第に明るくなっていき、部屋の中が白んでくる中で私は副島新の腕の中で嬌声を上げながら揺れていた。最初は唇を噛んで我慢していたけど、それも堰を切ったかのように押し寄せる波に耐えられず、思いのままに声を零す。


 そんな中、私の身体は次第に汗ばみ、しっとりと濡れていった。

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