幸せそうな顔をみせて【完】
7 二人の距離
 それから思う存分抱かれ、身体中が可笑しくなるくらいに私は何度も快楽の波に飲まれ、意識を飛ばしそうになった。そして、最後の大きな波を身体中で受け止めると私は何も考えることが出来なくなって…。気付くと副島新の腕に抱かれたまま甘い微睡の中、ゆっくりと視界が開ける。深愛を一身に受けた私は…身体も心も限界で全力疾走したかのように息をするのも苦しい。


「大丈夫か?」


「うん。でも、少し苦しい」


 副島新は私を抱き寄せると、ベッドサイドに置いていた水の入ったペットボトルに手を伸ばし器用に片手で蓋を開けると水を口に含み、綺麗な微笑みを浮かべてから私の唇に自分の唇を押し当ててきた。冷たい水を私の口内に流し込んでくるから、一瞬は吃驚したけど、その水の美味しさにコクコクと喉を鳴らす。飲みながら視線を飲みな副島新の顔に向けると唇を離してフッと笑った。


「煽ってるの?」


 煽っているつもりは更々ない。でも、優しい時間が幸せだなっとは思っていた。苦しかった呼吸は次第に戻ってくると、急に自分の姿を見て恥ずかしく思った。私は何も身に着けないまま、副島新の逞しい腕に抱かれていた。恥ずかしいのに、肌に触れる副島新の肌の感触が気持ちいい。温もりと優しい鼓動が私に伝わって来ていた。


 金曜日までは普通の同期でしかなかったのにたった一日でこんなにも深い関係になってしまった。展開の速さに自分の気持ちをついて行かせるのに必死な私は言葉が欲しかった。
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