幸せそうな顔をみせて【完】
 そして、今に至る。


「葵は俺のことどう思っている?」



 副島新の声が妙に私の耳に響く。どう思っているって…そんな簡単な言葉に言い合わらせない。でも、一緒にいて楽しいと思う。



「分からないけど…」


「分からないけど?」



 副島新は綺麗な瞳を少しだけ揺らしながら私を見つめる。吸い込まれそうなくらいに深い瞳の輝きに誘われるように少しだけ自分の気持ちが言葉になった。


「一緒に居て楽しい」


「なら俺の傍に居ればいい」


「それってどういう意味?」



 今も一緒にいる。自分の部屋に帰っている時以外はずっと一緒にいる。でも、そんなことじゃないって私も分かっている。でも、もう少しだけ甘い言葉が欲しい。自分の殻を破ることの出来るくらいの勇気を持てるくらいの言葉が欲しい。


「俺と結婚を前提に付き合うってこと。葵といると俺が幸せになる自信はある」


「私の幸せは?」


「幸せそうな俺の顔を見ていると葵は幸せになれる」
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