幸せそうな顔をみせて【完】
「何を知りたいの?」


「言わなくても分かってるでしょ。昼休みは一緒に取りましょうね」


 ニッコリと笑う二人に私は溜め息を零す。そして、二人を見つめ頷いたのだった。二人から視線を前に向けると、あの女の子は楽しそうに副島新に話し掛けている。本当に新規企画プロジェクトの件なのかと思うくらいに楽しそうに話している。そんな二人の姿を見つめていると、また耳元で囁く声が聞こえた。


「そんなに心配しないで大丈夫。副島センセイは葵しか見てないから」


「別に心配してないわ」


「ならいいけど、じゃ、昼休みに」


 そう言って、未知と香哉子は自分の営業室に行ってしまった。私はというと、テーブルの上に置いてあった資料を取ると、楽しそうに話している二人が気になりながらも会議室を後にしたのだった。私が出ていく時も、副島新の視線は目の前にいる女の子に注がれていて、私には全く気付いてないようだった。


 昨日の今日だから何かが違うかもしれないと思った私が間違いで、公私の線引きも出来てない自分を思い知る。いくら付き合っているとはいえ、会社でそういうのを出す人ではないけど、それでも、少しくらいは私の方を見て欲しいと思っていた。


「何をやっているんだろ」


 溜め息を零しながら、自分の席に戻ると、スケジュール帳を開く。朝にも確認したけど、午前中は新規企画プロジェクトの会議もあったけど、その後は取引先への訪問がある。契約というわけではないけど、先方の都合でミーティングの後に行くことになっていた。





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