幸せそうな顔をみせて【完】
 時計を見ると既に11時半を過ぎていた。会社に帰りつく頃には昼休みになっているだろう。昼休みという単語は今日の朝の出来事を思い出させた。絶対に許してくれなさそうな二人の笑顔が脳裏に浮かぶ。


 今日は未知と香哉子とランチを取るようになっていた。もちろん忘れてはないけど、聞かれるのはあの金曜日の飲み会からの副島新との顛末だと思う。あの二人の追及は甘くはないだろうし、全部吐かされると思う。副島新とのことを根掘り葉掘りは間違いない。


「逃げたいけど、逃げれない」


 そんな呟きを零しながら、私は帰社したのだった。


 営業室に戻ると私の机には一枚のメモがある。開くと、そこには未知の綺麗な字であるカフェの場所が書かれていた。ご丁寧に会社から少し離れたそのカフェは少しの会社から距離がある分、会社の人が使うことが少ない。そんな場所を指定されたということは…。


 私が思う以上に二人が楽しみにしているということ。
 
 
 自分の席の横を見ると…。副島新の姿はなく。白板を見ても外出した気配もない。今朝から挨拶も出来てないから、会社に戻ったらもしかしたら会えるかもという淡い期待は簡単に消えてしまった。今までも夕方までとか会わないこととかあったのに、今日は自分の心の甘さが露呈する。


「お腹空いた」


 私はカバンを自分の机の椅子の上に置くと、そのままお財布の入った小さなバッグを持つと、机の上に置かれたメモを取り、バッグの中に入れた。
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