幸せそうな顔をみせて【完】
「葵が副島センセイのことを好きなのは知っていたけど、それにも増して、副島センセイの独占欲の強さにね。だって、その指輪もセンセイからだろうし、そして、恋愛の興味のなかった葵にそんな顔をさせるとなると、さすがとしか言いようがないわ」


「そんな顔って?」


「今の葵。女の顔をしているもの。副島センセイの魅力というか毒気に当てられているって感じかしら。それにしても、ベッドでの副島センセイはどうだったの?普通でもあんなに格好いいんだから、二人だけの時って凄そう」


 凄そうって……。


 香哉子のくれた助け舟は泥船だったらしい。二人の中で勝手に盛り上がる中、深みに沈んでいく。思い出すだけで恥ずかしいくらいに愛されたのは絶対に言うことが出来ない。でも、このままじゃ、二人のテンションが空高く舞い上がっている場所から降りてくる気配はないから…。どうしたものかと思案する。


「一緒にいたら熱が出て、シャワーを浴びて…あの…そのそういうわけで」


「それって金曜日?」


「ううん。土曜日の夜。一緒にランチに行って買い物をして…途中で熱が出たの。で、副島新の部屋に行って看病して貰って。……で、そういうわけ」


 しどろもどろになる私を二人は見つめていて、綺麗すぎる微笑みが怖かった。


「と、いうことは…。金曜日からずっと日曜日の夜まで一緒だったってことよね。熱を出すって…子どもでもあるまいし逆上せたの?」
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