幸せそうな顔をみせて【完】
 小林主任がこの支社に来てから、成績は軒並み上昇している。本社営業一課で培ったノウハウを支社の若い社員にも惜しみなく分け与えていた。成績だけではなく性格も優しいし、気さくな雰囲気が人を惹きつける。一段と団結した営業課は毎日活気に溢れている。そんな雰囲気を作ったのは小林主任なのは間違いない。


 でも、私の恋心からの欲目があったとしても、副島新が小林主任に劣っているとは思わない。副島新も私から見れば十分に凄いと思うし、分かりにくいけどとっても優しい。大きな目標は大事だと思うけど、だからと言って悔しく思う必要はない。


『私にとっては副島新が一番だから…。それでいいでしょ?』


 本当はそう言いたかった。


「じゃ、頑張るしかないよね。負けていると思うなら努力しないといつまでも追いつけないから」


「もう少し優しく慰めようとか思わないの?」


「だって、別に慰める必要ないもの。だって、小林主任と比べる必要ないし」


 私のそんな可愛げのない言葉に副島新はクスクス笑う。さっきまで溜め息を零していたとは思えないくらいに楽しそうだ。今の会話にこんなに喜ぶようなのはないけど、それでも溜め息を零しているよりはいい。


「それって、あの小林主任と比べて俺の方がいいってこと?」


 私の可愛げのない言葉の意味を理解している。自分の副島新への恋心を見透かされたようで顔が熱くなるし、間違いではないから…一瞬答えに詰まってしまった。


「……ど、どうしてそうなるの?」
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