幸せそうな顔をみせて【完】
 それは私も同じ気持ちだった。一日に少しでもいいから副島新と二人だけの時間が欲しい。そのためなら…仕事も頑張れるかもしれないと思うから、恋心は不思議過ぎる。でも、8時までって…間に合う気配はない。


「でも、本当に頑張らないと時間なんかないよ」


「だから頑張るって言っているだろ。ほら、手を動かせ」


 そういうと、副島新は画面を真剣に見つめ、静かに指を動かし、キーを押す音だけが響かせる。そんな真剣な副島新の横で私がゆっくり出来るはずもなく、私も最大級のスピードを見せたのだった。


 営業室に残っている人が一人ずつ消えていく。


 そんな中、私と副島新はパソコンの画面を見つめ、必死に仕事をしていく。私がピックアップした資料を基に、副島新が徐々に形を仕上げていくように書類を作っていく。私はパソコンから取り出し、マーカーを引いて、渡すだけだけど、副島新はそれを綺麗に書類としての体裁を整えていく。

 
 出来上がった順に校正をして、正式に提出出来るくらいに仕上がったのは既に9時を回っていた。予定の時間は過ぎてしまった。


「これで終わりね。でも、これを午前中にとか無理じゃない?他にも仕事あったし」


「そうか?」


 それだけいうと、副島新はニッコリと笑ったのだった。そして、またクスクスと笑いながら魅惑的な微笑みを私に向ける。


「ご褒美は期待していいから」

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