幸せそうな顔をみせて【完】
 ご褒美と聞いて顔が緩む私がいる。


 有言実行な副島新のご褒美はなんだろう。出来れば甘いものだったら嬉しい。この間、コンビニで見つけたチョコレートの新商品をねだるのも悪くない。そんなことを考えていると、副島新は私の顔を見てフッと笑う。その顔を見ながら好きだと思う。こんな風に感情を曝け出す副島新の顔を見れるのは彼女としての私の特権かもしれない。


「何を想像した?」


「コンビニの新商品のチョコレート」


「欲がないな。でも、それが葵らしい。でも、ご褒美はもっといいものだから」


 もっといいものと言われても思いつかない。仕事は普段からするもので、頼まれた仕事とはいえ、ご褒美なんか普通ならありえない。それなのに、副島新は『ご褒美』という。


「え?もっと気になる。教えて」


「俺」


「は?」


 聞き違いかと思った。あの副島新が…ご褒美が『俺』??何か悪いものでも食べたのかもしれない。で、ないとそんなことは言わないだろう。驚いて見上げるとニッコリと笑う。その表情って…本気?一瞬頭の中に真っ赤なリボンを巻いている副島新を想像してしまった。


 女の子がよく言う『プレゼントはワ・タ・シ』ってやつ??


 でも、もし本当なら…。


「本気?」


 そんな言葉を呟きながら副島新を見つめていると…。クスクス笑いだす。


「嘘に決まっているだろ。お腹空いたからビールでも奢ろうかと思っただけ」




 
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