幸せそうな顔をみせて【完】
「そうか。朝から大変だな。で、先日の小林主任が絡んだ契約はどうなる?行けそうか?」


 今日は大事な取引がある。緑川さんは一筋縄ではいかないのは分かっているけど、あの時よりも値段はさほどあがっていないけど、内容的には魅力あると思う。でも、契約は相手があることだから、その時になってみないと分からない。相手も自分の会社の利益を考えて臨むだろうし、私も自分の会社の利益になるようにする。


 その折り合いをどこでつけるのかが大事な問題で、これからが取引をしていく中でお互いに利益になるようにしないと親密な関係は作れない。自分の会社だけの利益で動くと、その取引は成立したとしても、その後に続かない。結果的にマイナスになる。


「うん。後は私が頑張るだけ」


「そっか。俺も負けないようにしないとな」


「副島。ちょっといいか?」


「はい」


 そんな話をしていると、副島新は小林主任に呼ばれ行ってしまった。副島新の方も昨日の出張の件で小林主任との大事な話があるのだろう。私はメモを持って自分の席に座り、自分の携帯に残っている尚之の電話番号に電話をしようかと思ったけど、私は会社の電話を使うことにした。


 何回かの呼び出し音の後に聞こえたのは尚之の声だった。


『〇〇会社の瀬戸ですが、瀬能さんの携帯番号でしょうか?』


『葵。俺。尚之だけど』


 知っているけど…ここは営業室で、これは私用の電話ではなく仕事関係の電話。

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