幸せそうな顔をみせて【完】
 小林主任は瀬能商事の話をすると、一瞬、驚いたような顔をした。瀬能商事は小林主任でさえも、驚かせるような会社でこことの取引が固まれば、ここの支社も一気に飛躍できるだろう。尚之がどのくらいの規模の取引を考えているのか分からないけど、それでも社にはかなりの利益があると思う。


「明日の午前中は今のところ大きな用事がないので、瀬戸さんと一緒に訪問できるよ。でも、いきなり瀬能商事が瀬戸さん宛に連絡をしてくるってことは知り合い関係?」


「はい。瀬能商事の専務は私の大学の同期です。でも、それは関係なくて、新製品のことを聞いたから私に連絡してきたようです」


 小林主任の問いはもっともなことだった。一般の社員である私の新規先に瀬能商事はあり得ない。別に隠すことでもないから、私は正直に尚之との関係を話した。さすがに付き合っていて、自然消滅したことは言うことではないので伏せたけど、大学の時の同じ学部だったことまでは話した。



「そうか。でも、専務は瀬戸さんのことを信頼しているから連絡してきたんだろうね」


「そうだといいのですが」


「きっとそうだよ。じゃ、その彼を失望させないようにキッチリを仕事をしよう。俺も手伝うけど、この件の担当は瀬戸さんでいいよね」


 自信がなかった。今もいくつかの担当先は持っている。でも、瀬能商事はあまりにも大きすぎる。この仕事は小林主任クラスの仕事。私のような一般社員のそれも女性の私では無理だと思う。



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